送り狼様とお若婆さん

昔々、上田野村の舟川という所にお若ばあさんがいた。お若ばあさんは、お酒も好きだけれ
ども、それはそれはえらい働き者だった。
毎日、朝早くから夜遅くまで、いざり機を織ったり、畑仕事をしたり、また子供も大勢育てて身上を持えたということである。
でも、子供に仕事を言い付けたり、叱ったりするのに、あまり声が大きいので、近所の人達は「かみなりお若」と、陰では言っていた。
そのお家が三峰街道を裏にしていたので、近所の人達ばかりでなく、道を通る馬方さんや甲州の方の人達も「かみなりお若」と言えばよく知っていた。
そのお若さんが、あるとき、生まれ在所の芦ヶ久保の日向山へ行っての帰り、秋の日は短いので夕方になって芦ヶ久保の家を出たものだから、横瀬のお生川(うぶ川)辺りまで来るともう日が暮れ始めて暗くなってきた。

夜道は日が暮れねえやと、とぼとぼ歩いて石坂峠を越して影森を過ぎる頃は通り端の家は大
抵寝静まっていた。そして、人家の遠い椿森を過ぎ、愛宕尾根へと差し掛かったとき、誰か後を付いてくる気配がするのでひょいと振り向いてみると、暗闇の中に大きな小牛ほどもある狼様、が「すっとこ、すっとこ」ついて来る。
普通の人なら、キャーッと悲鳴を上げて逃げ出すところなのだが、そこは気丈なお若さんの
こと、「まあまあ、あんたはこの私を送ってくれてありがとう」と、言ったそうだ。すると、その狼様は立ち止まって、振り向いているお若さんの前へぴたりと座って、静かに
大きな口を聞けた。そうして、前脚で口の辺りを引っ掻くような格好をして、悲しそうにクウクウと小さな声を出した。
情け深いお若さんは、「お前様は口の中へ何か引うかけたのかえ。どれどれ、わしが取ってやるべえ」と、狼様の大きな口の中へ手を突っ込んで、中に引っかかっていた何かの骨を取ってゃった。
すると、狼様はまたお若さんの後をすっとこすっとこういてきたが、そのうち、どこともなく姿を消した。
そんなことがあった後も、お若さんが何かの用で夜遅くここを通るときは必ずあの狼様が付いてきて送ってくれた。
いくら気丈なお若きんでも、送ってくれるのが狼様ではさすがにうんざりして、ある晩、も
う送っていただかないように頼んだ。すると、それからは狼様が現れなくなった。

※お若お婆さんとは、筆者の祖母ひさの母親、車ヶ久保日向山、町田与志平(父は文蔵)家の
生まれで、その子に長女・こう(筆者・曾祖母)、次女・さだ(日向山与志平祖母)、長男・銀次郎(長女・たつ、夫・たかさんH己之作、子供なし、勇太郎は妻の弟の子、舟川江田勇太郎曾祖父)、次男・猪三郎(の子神林弥四朗H神林太郎祖父)、三男・芳蔵(近所・宮崎家へ養子、子供なし、妻・ミシは老後、生家〈東京か?〉へ引き取られたとか、筆者弟の吉幸、幼時に玩具〈電車といった〉を買ってくれると言ったきり実現せず)、四男・豊蔵(豊番といって大工、栃久保〈田中家へ養子〉・長男・辰蔵長男順次・辰の妹・しなは筆者の父・平太郎の初めの妻となるが離婚、順次は昭和十年頃、輯重兵一等兵で、中村のわがやへ輯重刀を吊してよく来た。九番目・ひこ(ひさ)祖母、(長姉・こうの嫁となるが昭和十八年七十八才で没)、九人兄弟中、二人不詳。(系図略)

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