狼様とひっくびり神

子供の頃、祖母などからよく「狼様」と「ひっくぴり神」の話を聞かされた。
昔、隣の「たけじ婆さん」がまだ若いお嫁さんだった頃のある春の晩のこと、お男様の元さんにうまらないことでさん、ざんお小言を言われた。
あーあ、うまらない、情けない。気晴らしにぷいっと外へ出た。外はあまり寒くなく、夜更けの鵬夜、だった。「たけじさん」は家の外へ出ると、母家のすぐ東棲の便所の向こうの小さな小川の所に立った。その小川は便所の横の石垣(現高き樫ぐね)の下を流れ、竹薮の麓を流れて「篭田う崖」の方へ流れ道元測へ滝に落ちる。
小川の向こう側は石菖の生えた細い道で、その向こう側は水のある田圃で、そのしも隣はコイのいる池だった(現八木氏邸)。
ふと、気が付くと、便所の横に誰かいるような気がする。鵬夜に透かして見ると、びっくり仰天、便所の壁に究れているのは、白い着物を着て頭に白い三角の布を着けた人の死体だった。
そして、そばには大きな子牛程もある「狼様」がによきんと座っていた。それは狼様がどこか
のお墓から人間の死体を掘り出して運んで来て、便所の壁に立て掛けて休んでいたのである。
昔は人が死ぬと、今のように火葬ではなく土葬といって、お墓の土へ深い穴を掘って埋めた。狼様は昔は粘土の性の人の死体を好んで掘ったそうである。
あまりの怖さに気丈な「たけじさん」も慌てて家へ逃げ込んだが、酒に酔ったお男さんがまだ怒鳴っているのでまた外へ飛び出した。
恐る恐るさうきのところへ行ってみると、便所の壁には死体もないし、狼様も何処へ行ったのか、何もいない。田園のカエルがゲコゲコと鳴いているだけだった。
あんまり威張られるので、いっそ死んでしまおうかと思ったこともあった。
また、ある晩、やはり勇様がお酒を飲んで威張るので、何時ものように外へ出てぼんやり田圃の方を見ると、池の土手のところに赤い頭巾を被って、締麗なちゃんちゃんこを着た小僧さんが遊んでいた。そのうち、その小僧さんはひょいひょいと身軽に池の土手を向こう側へ跳んだり、こっちへ移ったり、終いには田圃の向こうの土手上の方の大きな渋柿の木にするすると
登って、木の天辺の方の枝にぶら下がったり、大車輪などをしながら盛んにおいでおいでをし
でぶら下がれ、ぶら下がれと合図をする。
はて、変な奴だなと思って見ていると、ますますぶら下がって見せては、ぶら下がれ、ぶら下がれと手招きする。
ははーん、こいうが昔から聞いていた「ひっくぴり神」(首っうり神)だな。ょうし、そんな奴にだまされるもんか。人を馬鹿にしゃがってと、「たけじさん」はぶるうと身震いして、小僧さんの方を脱み付けると、あlら不思議、今まで大車輪やおいでおいでをしていた小僧さんの姿は、ふっとかき消えて元の鵬夜に戻って、田蛙がゲコゲゴ鳴いて、気持ちの良い春の晩だう
た。
そして、「たけじさん」は、これは俺の心に迷いがあったのかなあ、それではいけないと思ったそうである。
それっきり、「ひうくびり神」を見たことはなかったそうだ。

※この話は、昭和の初め頃聞いた話。明治二十一年頃、荒川村の舟川から来た祖母のおひさ婆、祖父の妹のおしん婆などから聞いた話である。たけじ婆さんはおしん婆の姉(文次郎の妹、助次郎の長女)で、隣の元さんの長男・百助さんと一緒になった。

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